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2010年08月 アーカイブ

イチオシ~ その1

「阿部昭18の短篇」阿部昭著

著者の自選になる短篇集です。

執筆順に並べてあり、その期間は二十年にわたっているので、おのずから作者の家族などの変化と共に、作者自身の考え方の変化なども伝えられて、興味は尽きません。

二番目にある「明治四十二年夏」は、いかにも三十代に書いたと思われる、力量感あふれる好短篇です。

職業軍人であった父の死後、父の中学時代の友人から、追悼の手紙が寄せられる。

それは、東京の四人の中学生が群馬県の妙義山から浅間山へ旅行する話です。

一人が途中で銭入を落としたために、皆で商人宿に泊まったり、前橋まで歩いたりして苦労した、という手紙だった。

イチオシ~ その2

「阿部昭18の短篇」阿部昭著

父は太平洋戦争後二十二年経って病死したのですが、海軍では志を得られなかったようで、海軍や戦争の話はあまりしなかった。

「その代り、半生に亙る海軍生活を一気に飛び越してむしろ中学時代のことをしきりに思い出すようだった」そういう父を「殴ってやろうとして遂に殴れないで終ったこと」がある。

その父の回想が、この作品の主題をなすのだが、父と子の対立と親和が、今度は自分が父となり、自立する子と対立することになるのが「ミ月の風」です。

部屋の物を物置に入れるか入れないかで言い争う子と母親を見て、その父親は、拳固でいきなり一発くらわした。

「出て行け、荷造りしてきょう中に出て行け」と言って自分の部屋に戻ったあと、父親は回想する。

「おやじを殺してやる。

そんな一行を日記に書きつけた日が、その昔自分にもあったことを父親は思い出しています。

」息子が二階のトイレに逃げこんで、中から鍵をかけてしまって出てこなくなった「みぞれふる空」という作品も父と子の対立を主題としています。

酷烈な、厳格な父親の言行が続くが、どことなくユーモラスになっているのは、作者の筆の冴えだ。

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