みなさんご存知の(´▽`) その5
北河内、中河内と歩き回って、現金払いで木綿地を買い求めた。
仕入れ現金払いというのが新七の方針だったが、現金払いとなると、資金の手当てが大変だった。
ところがそれよりも早く時代が急変して、いまも幕府の土台が揺るぎそうな気配だった。
人心の動揺は不安を呼び、商業の停滞を招いた。
「こら困ったな。とんと売れんやないか」
「はい、まさかこないになると思わしまへんさかい、つい安値につられまして・・・・・」
「まあええ、支払いは節季払いにしておいたんやろ」
「それでつい買いすぎました。しかしこの状態がつづきますと、やがて支払えなくなります」
「それは、その時になってから考えたらええ。いまどうこういうても、この先世間がどう動くか予想もつかんから、考えてもしかたがない。それよりできる限り力を尽くしてまず売ることや」
「はい・・・・・」
「商いも世の中も、どちらも波があって、いつも同じとは限らん。人の一生に似て、山あり谷あり、そこでその時の状態に従って手を打っていかんならん。つまり方針はあっても、法則はない。困難にぶつかって、それを乗り切っていくのが、商人の腕の見せどころと違うのか」
「はい、おっしゃるとおりだと思います。しかし何もせずにただ待っていると人間が腐ってしまいそうです」
「それもそうやな。では一つ河内へ行って、支払い期日をもうすこし延ばしてもろうてはいかがかな」
「なるほど、それも一法でございますなア・・・・・」
彼等は時の嵐の通過を待つ草原のように辛抱強かった。